- OJaC事務局
「令和2年度 OJaC 最終報告会」を開催しました

経済産業省「未来の教室」実証事業として行った不登校児向けのICT在宅学習モデルの構築事業「OJaC(オージャック)」。この度、2021年5月20日に、令和2年度の最終報告会を開催いたしました。報告会には、各地の教育委員会の方々を始め、学校教育に携わる多くの方々にご参加いただきました。
二時間にわたり開催された報告会では、OJaC半年間の活動報告を始め、不登校生の出席扱いに関するガイドライン、子どもたちへの影響を検証した結果など、実証事業を通じて得た様々な情報の共有が図られました。
また、今回の最終報告会開催にあたり、全国1741の地方自治体教育委員会と47都道府県教育委員会に、OJaCガイドライン評価委員会にて策定された「不登校児童生徒を対象としたICTを用いた在宅学習における出席・学習評価のガイドライン」が送付されました。
↓不登校児童生徒を対象としたICTを用いた在宅学習における出席・学習評価のガイドライン
<当日のプログラム>
2021年5月20日 13:00~15:00 オンラインにて開催
1:挨拶
経済産業省 商務・サービスグループ
サービス政策課長兼教育産業室長
浅野 大介 様
2:活動報告
OJaC事務局長
クラスジャパン小中学園代表
中島武
(OJaCシステム担当 古川)
3: 出席評価に関するガイドラインについて
ガイドライン評価委員会 座長
信州大学大学院 教育学准教授
林 寛平 様
活用事例:
ガイドライン評価委員
延岡市立岡富中学校 校長
粟田茂樹 様 (代読:延岡市立教育委員会 荒木 様)
4:OJaCにおける効果検証について
慶應義塾大学
総合政策学部教授
中室牧子 様
5: ガイドライン評価委員会より挨拶
京都市教育委員会
学校指導課 参与
安井 様
京都市教育委員会
教育長
稲田 慎吾 様
(代読:京都市教育委員会教育相談カウンセリングセンター長 長谷川 様)
<登壇者のコメント抜粋>
●挨拶 経済産業省 浅野 様

経済産業省が「未来の教室」を立ち上げ文科省と協力して教育に携わってきたことは、なぜ経産省が?といった疑問を持たれる方も多くいらっしゃると思います。ただ、学習者の立場に立った時、学ぶ場所というのは学校だけではありません。学校もあれば、民間の教育関連企業もそこに大きく寄与しています。社会で起こるさまざまな不思議を考えながら学ぶということは、今後の社会でも求められてくるでしょうし、そこに産業界からの関わりが深まればもっと楽しい学びを実現できるのではないかと考えています。
「なぜ学ぶのか。なぜ先生は授業をすすめるのだろう。」こうした悩みを抱え、学校に行きたくても通えない子どもたちにも、ICTを活用した学びの場を提供し、その評価をつけてあげたい。こんな思いで、文部科学省と省庁を超えて日々、取り組んできました。今回の取り組みを通して、オンラインだけの限界もまたここでみえてきたのではないでしょうか。
ここにどのようにして人が介在したらよいか考えるきっかけ、気付きになればと思います。
●活動報告
クラスジャパン学園 中島

今回の大きな目的の一つは、自宅で頑張る子どもたちにしっかり学校における評価をつけてあげるためのガイドラインを作ろうというものでした。北は、北海道から南は九州宮崎に至るまで、17の自治体の皆さまと一緒に作れたことは大きな成果だったのではないかと考えています。
●出席評価に関するガイドラインについて
信州大学 林 様

このガイドラインは、子どもの実態や地域の現状に合わせて自由に使っていただけるように仕上げています。今回OJaCに加わった自治体の中では校長会で議論し自分たちの実態にあったものにしようという動きもありました。
ガイドラインの末尾は「Ver.1.0.0」としています。これから活用事例を重ねていただき、広くフィードバックを集めてより公平・公正で使いやすいものに更新・バージョンアップしていきたいと思います。学校の先生方と研修会を開いてみたなど、ぜひご活用いただきご意見お寄せください。
↓不登校児童生徒を対象としたICTを用いた在宅学習における出席・学習評価のガイドライン
●活用事例:ガイドライン評価委員
延岡市立岡富中学校 校長 粟田茂樹 様 (代読:延岡私立教育委員会 荒木 様)
今回のガイドラインを活用し、ICTを活用した出席・学習評価が、生徒の卒業後の自立につながることを肯定的に捉えて検討を進めていきました。検討段階では、学校と生徒・保護者間で連携が図られICT教材を生徒が活用していることを確認できることが評価の前提とし、生徒個々の不登校の状況をふまえて対応することが必要であることを確認しました。
出席については岡富中学校では、通常の遅刻・早退において20分程度学校に滞在することが必要であるとしていることから、ICTでも20分以上の学習をしていることが前提としました。学習評価についてはOJaC学習レポートと本校の年間指導計画を照らし合わせ教科担当を中心に個々の生徒について検討。結果、OJaCを実施した4名の生徒のうち、2名について出席・学習評価への反映することとしました。ただ、学習評価に関しては当該教科・学年の履修状況から結びつけることは困難であったため、通知票所見、指導上参考となる所見欄に学習に向かう姿勢や努力の成果を肯定的に記載することとしました。
●OJaCにおける効果検証について
慶應義塾大学 中室 様

今回実施できた検証・分析結果は、OJaCを受けなかった子どもとの比較ができなかったという面において評価は限定的なものではありますが、ある程度の現状はみえてきたと思います。今後そのあたりは改善していければと思います。少しでも世の中を良い方向に導けるように貢献できればと思います。ご協力いただきました自治体の皆様には心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
●ガイドライン評価委員会よりご挨拶
京都市教育委員会 学校指導課 参与 安井 様

このOJaCプロジェクトでは、さまざまなオンラインを活用した学習サービスをご提供いただきました。これらは、各自治体の今後ICT教育において大変参考になる事業だったと考えています。また、ガイドライン評価委員会でも参加自治体の皆様とご意見を交換することができ、私自身評価委員として多くのことを学ぶことができました。一方、公平性の問題や生徒のモチベーション維持など新たな課題もみえてきたのではないかと思います。人との関わりかたも含めて今後どのように改善していくことができるのか考えていきたいと思います。
●京都市教育委員会 教育長 稲田 慎吾 様
(代読:京都市教育委員会教育相談カウンセリングセンター長 長谷川 様)
不登校の児童生徒は全国的に増加しており、社会全体として喫緊の課題となっています。そんな中、今回のOJaCに参加させていただいことはとても良い機会であったと感じております。本市で取り組んだ生徒においても「自分のペースで学べる、オンライン体験活動が楽しい、チャット担任の先生が親身」など嬉しい感想を聞くことができ、ICTを活用した学習支援が不登校児童生徒にとって大切な居場所であることが確認できました。
また、この取組における議論を通じて、全国の教育委員会のみなさまとの連携を大いに深められたと感じています。これを期に、引き続きお互いの知恵を分かち合い、行政の枠組みを超えた教育の実現ができればと願っております。